2010/03/26

【いざなう】 誘う

男は誘いに弱い。

それこそ、誘惑があれば
無理矢理であっても言い訳をひねくりだして、
正当化してまでも従ってしまう。
された事はないが色仕掛けなんてのは良い例であろう。
男の脳はあっさりと下半身に支配されてしまうものだ。

たとえば、ちょっとした偶然で知り合い、
照明を抑え人目からも逃れられるような場所で並んで座り、
何気ないやりとりを繰り返していくうちに
二人の間に充実した無言の時間が流れ始め、
私にやんわりとゆだねるように体を傾ける。
鼻先をくすぐるような甘い香り、ほのかなぬくもり、
すらりとのびた細い腕、しなやかな線、透き通るような肌、
どこを触れても剛はなく柔らかな体、
ふわふわと重量感がなく風に飛ばされそうな衣服。
どれをとっても私を陥れようとしている。

女性は魔物である。

魔物の味は一度覚えてしまうと忘れるのは難しい。
そして、その味は総じてはずれはないのである。

アダムとイブは禁断のリンゴからその味を覚え、
イザナギとイザナミは
誘いの言葉から神々の系譜がひもとかれる。

先に書いたとおり、こんな大げさな事を書いてでも
自分を正当化してしまうのが男の性なのである。

いけないといわれる事ほど
愉しさを加速させる事はないという。
今であれば深夜の時間に歩き回っていても
別段特筆するほどの事はないのだが、
未成年時であれば深夜の街中というのは
ただ歩いているだけでも高揚したものだ。
女性とつきあっている場合に置いても
ベクトルは違うものの大変な高揚感に包まれる。

そういった感覚を
魔味や媚味とでも名づけて良いのであれば、
そう名づけたい。

誘うという言葉を名に冠しているのは
神話に出てくるイザナギとイザナミの二人だ。
イザナギが誘う男、イザナミが誘う女の意味だという。
まず始めに女神であるイザナミがイザナギを誘う事から
神々の家系図が始まる。
今時分だと女性からアプローチするのは珍しい事ではないが、
当時はよろしくない事とされていて、
第一子は骨のない蛭子を授かる事となる。

これをどう読み解くかは専門書に譲るとして、
ひとつはっきりとしているのは
神であっても誘いにのってしまうという事だ。

マリリンモンローよろしく手のひらを顔の前に差し出し、
人差し指から流れるように招き入れつつ
「カモーン」なんて言われれば断れない。
まあ、そういう行動で引かなければの話だが。

かくして男の業は深い。

神を引き合いに出してまで
誘いに対する弱さを言い訳しなければならないほど
弱いものなのである。

女は魔物であるのだ。

最後に一言付け加えておきたい。
私の友人・知人で
戸籍簿に女性と記されている淑女諸君。
君らは例外だ。

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